腕時計に使用される904Lステンレスは、優れた耐食性と硬度を誇る素材です。一般的な316Lとの違いとして、クロムやニッケルの含有量が多く、腐食や傷に強い点が挙げられます。
ロレックスの904Lが有名ですが、ロレックス以外の時計ブランドでも採用されています。
本記事では、ロレックス以外で904Lステンレスを採用する腕時計の価格、成分、特徴、硬度を解説します。また、金属アレルギーへの影響や、他のステンレス素材との違いも紹介します。
- この記事でわかること
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- ロレックス以外で904Lステンレスを採用している時計ブランドがわかる
- 904Lステンレスの特徴や316Lとの違いが理解できる
- 904Lステンレスを使用した時計の価格帯が把握できる
- 904Lステンレスのメリット・デメリットや選び方がわかる
ロレックスと904Lステンレスの関係
- ロレックスが904Lステンレスを採用したのはいつから?
- ロレックスの904Lステンレス「オイスタースチール」とは?
- 904Lステンレスの特徴とロレックスのこだわり
- 316Lとの違いと耐久性の比較
- 904Lステンレスはなぜ高級時計に使われるのか?
ロレックスが904Lステンレスを採用したのはいつから?

ロレックスは1985年に時計業界で初めて904Lステンレスを採用しました。
もともと904Lステンレスは、化学産業や航空宇宙産業で使用される耐食性に優れた特殊合金であり、時計の素材としては一般的ではありませんでした。
しかし、ロレックスはこの金属の優れた特性に着目し、時計の外装素材として採用する決断を下しました。
当初は、ダイバーズウォッチ「シードゥエラー」など一部のモデルに限られていましたが、後にデイトナやGMTマスターなど、すべてのステンレススチールモデルに904Lが採用されるようになりました。
ロレックスはこの素材を「オイスタースチール」と名付け、独自の品質基準に基づいた特別な加工を施しています。
この採用によって、ロレックスの時計は従来の316Lステンレスよりも耐久性や耐食性が向上し、長期間にわたって美しい輝きを保つことができるようになりました。
他の高級時計ブランドでも904Lステンレスを使用するケースは増えていますが、すべてのモデルに採用しているのはロレックスだけです。
ロレックスの904Lステンレス「オイスタースチール」とは?

ロレックスが使用する904Lステンレスは、単なる工業用金属ではなく、特別な処理を施された高品質な素材です。ロレックスはこの素材を「オイスタースチール(Oystersteel)」と呼び、独自の精密な製造プロセスによって仕上げています。
オイスタースチールの特性
オイスタースチールは、一般的な316Lステンレスと比較してクロム、ニッケル、銅の含有量が高く、耐食性や耐酸性が格段に向上しています。
特に塩分や湿度の高い環境でも錆びにくく、ダイバーズウォッチをはじめとしたスポーツモデルに最適な素材です。また、硬度が高いため傷がつきにくく、長年にわたって美しい状態を維持できます。
ロレックスの独自加工技術
オイスタースチールのもう一つの特徴は、ロレックスが独自に開発した高度な研磨技術による仕上げです。
904Lステンレス自体は高硬度ゆえに加工が難しい素材ですが、ロレックスは自社の工場で専用の設備と技術を用いて、美しい光沢と滑らかな質感を実現しています。
この磨き上げられた輝きは、一般的なステンレススチールとは一線を画し、高級感を際立たせる要素の一つとなっています。
なぜロレックスだけが全面採用できるのか?
多くの時計ブランドは依然として316Lステンレスを採用しているのに対し、ロレックスはすべてのステンレスモデルに904Lを使用しています。
その理由の一つは、ロレックスが独自の鋼材加工設備を持ち、原材料の品質管理から最終仕上げまで一貫して行う体制を確立しているためです。
これは他のブランドでは容易に真似できるものではなく、ロレックスの技術力と資金力の高さを示す証でもあります。
このように、ロレックスのオイスタースチールは単なる904Lステンレスではなく、ロレックス独自のノウハウと高度な技術によって磨き上げられた特別な素材であることがわかります。
904Lステンレスの特徴とロレックスのこだわり

ロレックスが採用している904Lステンレスは、一般的なステンレススチールとは異なる特性を持つ「スーパーステンレス」とも呼ばれる高性能素材です。
特に耐食性や耐久性、そして美しい輝きを備えており、ロレックスがこの素材にこだわる理由がここにあります。
904Lステンレスの主な特徴
- 高い耐食性
-
904Lステンレスはクロムやモリブデン、ニッケル、銅を多く含んでおり、通常の316Lステンレスよりも塩分や湿気に対する耐性が優れています。特に海水や化学物質にさらされる環境でも錆びにくいため、ロレックスのダイバーズウォッチに最適な素材です。
- 高い硬度と耐久性
-
904Lステンレスは硬度が高く、耐摩耗性にも優れています。一般的なステンレスと比べて傷がつきにくく、長期間使用しても外観の美しさを保ちやすいのが特徴です。
- 美しい輝きと質感
-
904Lステンレスは磨けば磨くほどに美しい光沢を生み出す特性があります。ロレックスは独自の研磨技術を用いることで、通常のステンレスにはない独特の高級感あふれる仕上がりを実現しています。
ロレックスのこだわりと加工技術
ロレックスが904Lステンレスを全面採用した背景には、単なる素材の選定だけでなく、製造・加工の技術力へのこだわりがあります。
- 一貫した品質管理
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ロレックスは904Lステンレスを自社の鋼材工場で製造し、厳格な品質管理のもとで加工しています。これにより、常に最高水準の素材を時計に使用することが可能になっています。
- 高度な研磨技術
-
904Lステンレスは硬度が高いため、加工が難しいというデメリットがあります。しかし、ロレックスは独自の研磨技術を駆使し、904Lステンレス特有の美しい光沢を最大限に引き出すことに成功しています。
なぜ他のブランドは全面採用しないのか?
904Lステンレスは高価で加工が難しく、大量生産には向いていません。
そのため、多くの時計ブランドはより扱いやすい316Lステンレスを採用しています。しかし、ロレックスは高級時計ブランドとしてのこだわりを貫き、あえてこの難易度の高い素材を全面採用することで、他社にはない独自の価値を提供しています。
ロレックスの904Lステンレスへのこだわりは、単なる素材選びではなく、ブランドとしての哲学そのものと言えるでしょう。
316Lとの違いと耐久性の比較

ステンレススチールにはさまざまな種類がありますが、腕時計に使用される代表的なものが 316Lステンレス と 904Lステンレス です。ロレックスが904Lを採用している一方で、多くの時計ブランドは316Lを使用しています。それぞれの違いを比較し、耐久性の面からも検証してみましょう。
1. 成分の違い
316Lと904Lの最大の違いは、含まれる合金成分です。
ステンレスの種類 | 主な成分 | 特徴 |
---|---|---|
316L | クロム(16-18%)、ニッケル(10-14%)、モリブデン(2-3%) | 医療用にも使われる高耐食性ステンレス |
904L | クロム(19-23%)、ニッケル(23-28%)、モリブデン(4-5%)、銅(1-2%) | 耐食性・耐久性がさらに高いスーパーステンレス |
904Lはクロムやニッケルの含有量が多く、さらに銅を加えることで、より高い耐食性を実現しています。
2. 耐食性の違い
904Lステンレスは、316Lよりも腐食や錆に強い特徴があります。特に 塩水や酸性環境に対する耐久性が高く、海水に長時間触れるダイバーズウォッチなどに適しています。
- 316L:長期間使用すると錆や腐食のリスクがある
- 904L:錆びにくく、美しい状態を長期間維持
ロレックスのダイバーズウォッチ「シードゥエラー」や「サブマリーナ」が海水に強いのは、この904Lの特性によるものです。
3. 硬度と耐久性の違い
904Lステンレスは、316Lよりも 硬度が高く、耐摩耗性に優れています。これにより、時計のケースやブレスレットに傷がつきにくく、長年使用しても新品同様の美しさを保ちやすくなっています。
ステンレスの種類 | 硬度(HRB) | 引張強度(MPa) |
---|---|---|
316L | 約80HRB | 約485MPa |
904L | 約95HRB | 約520MPa |
数値的にも、904Lの方が高強度であることがわかります。

4. 加工の難しさとコストの違い
904Lステンレスは硬度が高いため 加工が非常に難しく、製造コストが高い というデメリットがあります。そのため、ほとんどの時計ブランドは316Lを採用しており、904Lを全面採用しているのはロレックスをはじめ、ごく一部のブランドに限られます。
まとめ:どちらが優れているのか?
比較項目 | 316Lステンレス | 904Lステンレス |
---|---|---|
耐食性 | 高い | 非常に高い |
硬度 | 標準的 | 高い |
耐久性 | 標準的 | 優れている |
加工のしやすさ | しやすい | 難しい |
コスト | 低い | 高い |
結論として、904Lステンレスは 耐食性・耐久性に優れた高級素材 ですが、加工コストが高いため、多くのブランドは316Lを採用しています。
一方、ロレックスはあえて904Lを選び、その特性を活かした高品質な時計作りを徹底しているのです。
ロレックス以外で904Lステンレスを採用するブランド
- 904Lステンレスを使用する腕時計ブランド
- ボールウォッチの904L採用モデルと特徴
- ジラールペルゴやショパールの904Lモデル
- 904Lステンレスの価格やコストの違い
- 904Lステンレスのメリット・デメリット
ロレックス以外で904Lステンレスを採用するブランド

ロレックスは904Lステンレスを全面採用した最初の時計ブランドですが、近年では他の高級時計ブランドも一部のモデルにこの素材を採用し始めています。加工の難しさやコストの高さから全面採用するブランドは少ないものの、品質にこだわる一部のメーカーが積極的に導入しています。
1. 904Lステンレスを公表しているブランド
ロレックス以外で、904Lステンレスの使用を明言しているブランドには、以下のようなものがあります。
これらのブランドは、ロレックスほど全面的ではありませんが、特定のモデルで904Lステンレスを採用しています。
2. 904Lと同等の特性を持つ独自素材を採用しているブランド
一部の時計メーカーは、904Lステンレスと同等の耐食性や耐久性を持つ独自の合金を開発・使用しています。
ブランド | 採用ステンレス | 904Lとの関係 |
---|---|---|
ショパール(Chopard) | ルーセントスチール | 904Lと同等の特性を持つ独自合金 |
グランドセイコー(Grand Seiko) | エバーブリリアントスチール | 904L以上の耐食性を誇る独自素材 |
SINN(ジン) | Uボートスチール | 高耐食性の独自ステンレス |
これらのブランドは、904Lステンレスの特性を活かしつつ、それぞれのブランド独自の合金技術を活用して、さらなる差別化を図っています。
3. なぜ多くのブランドは904Lを採用しないのか?
904Lステンレスは確かに優れた素材ですが、その採用には 大きなコスト と 高度な加工技術 が必要です。そのため、次のような理由から、多くのブランドは316Lステンレスを採用し続けています。
- 加工が難しい → 硬度が高く、特殊な設備や技術が必要
- コストが高い → 原材料価格が高く、製造コストが増加
- 製造効率が低い → 316Lと比べて扱いにくく、生産性が低下
このような理由から、ロレックスほどの資金力と技術力を持たないブランドでは全面採用が難しい のが現実です。そのため、一部のブランドのみが限定的に採用し、独自の高級素材で差別化を図る傾向にあります。
4. 904Lステンレスを採用する時計は高級ブランドの証?
現在の時計業界では、904Lステンレスを採用することがブランドの高級性を示す一つの指標 になりつつあります。
- ロレックスが全面採用することで、904Lは「高級ステンレス」として認知されるようになった
- その結果、904Lを採用するブランドやモデルは、一定の品質と価値を持つものとして評価されるようになった
904Lステンレスは、単なる素材ではなく、時計ブランドのこだわりや品質への自信を示す証とも言えるでしょう。
ボールウォッチの904L採用モデルと特徴

ボールウォッチ(BALL Watch)は、高い耐久性と視認性を誇る実用的な腕時計ブランドとして知られています。その中でも、比較的早い段階から904Lステンレスを採用したブランドのひとつ であり、特にタフな環境に適したモデルにこの素材を使用しています。
1. ボールウォッチが904Lを採用する理由
ボールウォッチは、鉄道時計としての歴史を持つブランドであり、耐衝撃性・耐磁性・防水性 に優れたモデルを数多く展開しています。そのため、素材選びにもこだわりがあり、高耐食性・高耐久性を持つ904Lステンレスをケースやブレスレットに採用 しています。
一般的な316Lステンレスよりも硬度が高く、腐食にも強いため、長期間の使用に耐え、過酷な環境でも美しさを維持できる ことが採用の大きな理由です。
2. 代表的な904L採用モデル
ボールウォッチの904Lステンレス採用モデルとして、以下のような人気シリーズがあります。
① エンジニア オハイオ クロノメーター
- 特徴:シンプルなデザインながら高い精度と耐久性を誇る
- ムーブメント:スイスC.O.S.C.認定クロノメーター(RR1103-C)
- 耐磁性能:80,000A/m
- ケース素材:904Lステンレス
- 防水性能:100メートル防水
このモデルは、もともと316Lステンレスを使用していましたが、改良を重ね、現在ではケースとブレスレットに904Lステンレスを採用 しています。
#推し時計アンダー30万円
— ダイジ (@Daizi0302) October 3, 2021
ボールウォッチオハイオです。そもそもボールウォッチは全体的にコストパフォーマンス高くアンダー30万のモデルも多い。オハイオは904ステンレスでかつ、耐衝撃、耐磁など機能性も高い。メンテナンス代も安く初めての機械式にオススメできます。 pic.twitter.com/nQ4Xw8zVJi
② エンジニア マーベライト クロノメーター
- 特徴:視認性の高いインデックスとタフな性能を備えたモデル
- ムーブメント:スイス製自動巻き(C.O.S.C.認定クロノメーター)
- 防水性能:100メートル防水
- ケース素材:904Lステンレス
- 夜光機能:マイクロガスライト(自己発光)
このモデルも904Lを採用しており、長期間の使用でも光沢を維持できるため、高級感と実用性を兼ね備えた時計 となっています。
3. 904L採用によるメリットとボールウォッチのこだわり
ボールウォッチは、904Lステンレスを採用することで、以下のようなメリットを提供しています。
- 圧倒的な耐食性:904Lは塩分や湿気による腐食を防ぎ、過酷な環境下でも錆びにくい
- 高い耐久性:一般的な316Lよりも硬度が高く、傷がつきにくいため、長期間美しい状態を維持
- 美しい仕上がり:ボールウォッチ独自のポリッシュ技術と相まって、高級感のある光沢が長持ち
また、ボールウォッチは904Lの加工が難しいことを認識しつつも、その高い耐久性と実用性を重視し、ミリタリーウォッチやスポーツウォッチの分野で積極的に採用 しています。
4. 価格帯とコストパフォーマンス
ボールウォッチの904L採用モデルは、25万円~30万円程度の価格帯 で販売されています。
- エンジニア マーベライト クロノメーター:約25万3000円
- エンジニア オハイオ クロノメーター:約28万円
ロレックスほどの価格帯ではないものの、同じ904Lステンレスを採用していながら比較的手頃な価格で入手できる点 は大きな魅力です。
ジラールペルゴやショパールの904Lモデル

ボールウォッチに続き、ジラールペルゴやショパールといった高級時計ブランドも、一部のモデルで904Lステンレスを採用しています。
これらのブランドは、ロレックスと同様に素材の品質にこだわり、時計の耐久性や美しさを向上させるために、このスーパーステンレスを活用しています。
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1. ジラールペルゴの904Lステンレスモデル
ジラール・ペルゴ(Girard-Perregaux)は1791年創業のスイスの老舗ブランドで、高級時計の分野で確固たる地位を築いています。近年では、904Lステンレスを一部モデルに採用し、耐久性と高級感を強化しています。
代表的なモデル:ロレアート 904Lシリーズ
- ケース素材:904Lステンレス
- ムーブメント:スイス製自動巻き
- 防水性能:100メートル防水
- 特徴:洗練されたデザインと耐久性を兼ね備えたラグジュアリースポーツウォッチ
ジラールペルゴは、ロレアートシリーズに904Lステンレスを採用することで、従来の316Lモデルよりも高い耐久性と美しい光沢を実現しています。特にポリッシュ仕上げが際立ち、経年変化によるくすみが少ない点が魅力です。
待ち時間にGPへ。
— らだい (@tw_rdi) February 15, 2025
ロレアート38。
セージグリーン良すぎじゃない? pic.twitter.com/buU42949o4
2. ショパールの904L相当素材「ルーセントスチール」
ショパール(Chopard) は1860年に創業したスイスの高級時計・ジュエリーブランドで、環境や素材に配慮した時計作りを行っています。
ショパールは、904Lと同等の特性を持つ独自の素材 「ルーセントスチール(Lucent Steel™)」 を開発し、ラグジュアリーウォッチに採用しています。
代表的なモデル:アルパインイーグル
- ケース素材:ルーセントスチール(904L相当)
- ムーブメント:スイス製自動巻き(C.O.S.C.認定クロノメーター)
- 防水性能:100メートル防水
- 特徴:環境に配慮したリサイクルステンレスを使用し、高耐久性と美しい光沢を両立
ルーセントスチールは、一般的なステンレススチールよりも硬度が高く、研磨後の光沢が際立つのが特徴です。さらに、環境に配慮したリサイクルメタルを50%以上使用 しており、持続可能な時計製造を目指すショパールの理念が反映された素材となっています。
3. 904Lステンレスを採用する理由
ジラールペルゴやショパールが904Lステンレス(または同等の素材)を採用する理由は、以下のような点にあります。
- 耐食性の向上:長期間使用しても錆びにくく、美しい外観を維持できる
- 高い硬度:傷がつきにくく、耐久性が高い
- 独特の光沢:磨き上げることで、より美しい輝きを生み出す
- ブランド価値の向上:高級ブランドとしての差別化要素になる
特にショパールのルーセントスチールは、環境への配慮と高級感の両立 を目指しており、単なる904Lの代替ではなく、ブランド独自の価値を持つ素材となっています。
4. 価格帯と入手のしやすさ
ジラールペルゴやショパールの904Lステンレスモデルは、ボールウォッチに比べてさらに高価格帯に分類されます。
ブランド | モデル | 価格帯 |
---|---|---|
ジラールペルゴ | ロレアート 904Lシリーズ | 約150万円~ |
ショパール | アルパインイーグル | 約140万円~ |
いずれも100万円以上の高級ラインであり、ロレックスの904Lモデルと並ぶ価格帯 となっています。
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904Lステンレスの価格やコストの違い

904Lステンレスは、その優れた耐食性や高級感から高級時計ブランドに採用されることが増えていますが、一般的なステンレス(316L)と比べると、価格や加工コストが大きく異なります。この違いが、多くのブランドが904Lを採用しない理由の一つでもあります。
1. 904Lと316Lの価格の違い
ステンレスの価格は、含有される金属成分によって大きく変わります。特に、904Lは316Lと比べてクロム、ニッケル、モリブデン、銅の含有量が多い ため、原材料コストが高くなります。
ステンレスの種類 | 主な成分 | 価格(目安) |
---|---|---|
316L | クロム(16-18%)、ニッケル(10-14%)、モリブデン(2-3%) | 1kgあたり 約5ドル |
904L | クロム(19-23%)、ニッケル(23-28%)、モリブデン(4-5%)、銅(1-2%) | 1kgあたり 約15ドル |
904Lは316Lの約3倍のコスト がかかるため、原材料費だけでも時計の価格に大きな影響を与えます。
2. 加工コストの違い
904Lステンレスは硬度が高く、耐摩耗性に優れている一方で、加工が難しい素材です。そのため、製造過程でのコストが316Lよりも高くなります。
比較項目 | 316L | 904L |
---|---|---|
加工のしやすさ | 比較的容易 | 硬度が高く加工が難しい |
研磨のしやすさ | 標準 | 美しいが、時間と技術が必要 |
専用設備の必要性 | 不要 | 特別な設備が必要 |
コスト | 低い | 高い |
特に、ロレックスは904Lを全面採用するために独自の製造設備を導入 し、研磨技術を向上させています。この専用設備があることで、他のブランドが簡単に904Lを全面採用できない理由となっています。
3. 時計価格への影響
904Lステンレスの高コストは、時計の価格にも直接影響を与えます。
ブランド | モデル | ケース素材 | 価格帯 |
---|---|---|---|
ロレックス | サブマリーナ | 904L(オイスタースチール) | 約150万円~ |
ボールウォッチ | エンジニアIII | 904L | 約25万円~ |
ジラールペルゴ | ロレアート 904L | 904L | 約150万円~ |
ショパール | アルパインイーグル | ルーセントスチール(904L相当) | 約140万円~ |
ロレックス以外のブランドでも904Lを採用しているものの、加工の難しさやブランド価値の違いから価格にはばらつきがあります。
4. 904Lは本当に価格に見合う価値があるのか?
価格が高いことは間違いありませんが、その分耐食性・耐久性・美しい光沢 など、多くのメリットがあります。特に、時計を長期間愛用したい人にとっては、経年劣化しにくい904Lの価値は非常に高い と言えるでしょう。
また、ロレックスのようにブランド力がある時計であれば、904Lを採用していること自体が価値の証明となり、資産価値の維持にもつながる という利点もあります。
904Lステンレスのメリット・デメリット

904Lステンレスは、時計業界において高級素材として知られていますが、すべての点で優れているわけではなく、メリットとデメリットの両面を理解することが重要です。ここでは、その特徴を詳しく解説します。
1. 904Lステンレスのメリット
- ① 優れた耐食性
-
904Lステンレスは、クロムやニッケル、モリブデン、銅の含有量が多いため、塩水や湿気、酸に対して非常に強い耐食性を持っています。そのため、海水や汗にさらされる環境でも錆びにくく、長期間美しい状態を維持できる という大きな利点があります。
- ② 硬度が高く、傷がつきにくい
-
904Lステンレスは、引張強度(約520MPa)や硬度(約95HRB)が高いため、日常使用による細かい傷がつきにくい のが特徴です。これは特にスポーツウォッチやラグジュアリーウォッチにおいて大きなメリットとなります。
- ③ 磨けば美しい光沢が持続
-
この素材の特性として、研磨することで高級感のある輝きを生み出し、長期間にわたって光沢を維持できる という点が挙げられます。ロレックスが採用している「オイスタースチール」の仕上げ技術は、この特性を最大限に活かしています。
- ④ 長期間の使用に耐えうる耐久性
-
時計は長年にわたって使用されるものですが、904Lステンレスは耐久性が非常に高いため、経年劣化が少なく、長期にわたって美しさを保つ ことができます。
2. 904Lステンレスのデメリット
- ① 加工が難しくコストが高い
-
904Lステンレスは、316Lよりも硬度が高く、特殊な設備と高度な技術が必要なため、製造コストが非常に高い という欠点があります。そのため、ロレックスのような資本力のあるブランドでなければ、全面採用するのが難しい のが現状です。
- ② 時計の価格が高くなる
-
製造コストの高さは、そのまま時計の価格に反映されます。ロレックスをはじめ、904Lステンレスを採用しているブランドの時計は、一般的に100万円以上の高価格帯 となる傾向があります。
- ③ 316Lと比べて明確な違いを実感しにくい
-
904Lステンレスは、確かに耐食性や耐久性に優れていますが、日常的な使用において316Lと大きな違いを感じることは少ない という意見もあります。例えば、日常的に雨や汗にさらされる程度であれば、316Lでも十分な耐久性を持っています。
- ④ アレルギーのリスクがある
-
904Lステンレスはニッケルの含有量が多いため、金属アレルギーを持つ人にとっては刺激となる可能性があります。一方、316Lは「サージカルステンレス」として医療器具にも使用されるほど低刺激な素材であり、アレルギーのリスクは比較的低いとされています。
3. 904Lステンレスはどんな人に向いている?
向いている人
✅ 腕時計を長期間使用し、美しい状態を維持したい人
✅ 腕時計の高級感や仕上げの美しさにこだわる人
✅ ダイバーズウォッチやスポーツウォッチを愛用し、過酷な環境で使う人
✅ ロレックスやハイエンドブランドの時計を購入する予定の人
向いていない人
❌ コストパフォーマンスを重視し、価格を抑えたい人
❌ 日常使用での違いをあまり気にしない人
❌ ニッケルアレルギーを持っている人
904Lステンレスを採用するロレックス以外のブランドまとめ
- 904Lステンレスはロレックス以外でも採用されている
- ボールウォッチは比較的早く904Lを採用したブランドの一つ
- ジラールペルゴはロレアートシリーズに904Lを使用
- ショパールは904L相当のルーセントスチールを開発
- ルノータスやノルケインも一部モデルで採用
- 904Lステンレスは316Lより耐食性と硬度が高い
- 腕時計の長期使用において錆びにくい利点がある
- 研磨によって独特の高級感ある輝きを維持できる
- 加工の難しさから全面採用するブランドは少ない
- 904Lステンレスを使用する時計は高価格帯が多い
- 一部のブランドは独自の高耐食性ステンレスを開発
- 904Lステンレスの採用はブランド価値向上にも貢献
- 金属アレルギーのリスクがあるため注意が必要
- コストと加工技術の問題で広く普及していない
- ロレックス以外の904L採用ブランドは限られている